a la carte_あぶらちゃん(くすのき科)
英語でいけばなを教えるクラスを担当しているのですが、花材の英語名は厄介なものです。英語圏でも地域によって呼び方が違ったりします。日本名のほうがむしろ覚えやすいことも多く、名前の話題で盛り上がり、印象深いワークショップになることもあります。
先日、久しぶりにクラスで見本としてある花木をいけていたところ、「先生って、植物に(ちゃん)ってつけるのですね?!」と、数名の生徒が密かにいっていると助手に聞かされました。そんな趣味はありません、と教壇で否定。この花材は「あぶらちゃん」という名前なのです。
私がはじめてこの枝をいけたときは「ズサ」と習いました。くすのき科なので青モジやクロモジとおなじく枝にはさみを入れると、微かに芳しい香りに気がつきます。枝は、形を作ることが出来て小さな薄い黄緑の花が空間に広がっています。
「あぶら」は昔この実からとれた油を灯火に使用したからとか。「ちゃん」はタールを蒸留したあと残る固形物と辞書に書かれていました。はじめにそのことを発見した人はすごい!そしてそれを名前にした人も。「あぶらちゃん」ときいてクスっと笑った人、花の名前を覚えるのが実は苦手な私のような人まですぐに覚え、この花はその名前の響きでその時代時代の人々に、一時の幸せを与えてきた事でしょう。
雌雄異株で、花は雄花のほうが大きいそうです。香りから英語名は「Japanese wild allspice」ですが、やはり「あぶらちゃん」のほうに私は軍配をあげたいのです。(光加)